「おぼろ昆布」の文化的価値を創出をめざして、敦賀市との共同調査をスタート【LORC】
2022.08.08
敦賀市が文化庁の「食文化ストーリー」創出発信モデル事業に採択。
本学が共同研究を受託し、政策学部学生らと「おぼろ昆布加工技術」調査を実施
【本件のポイント】
◯ 龍谷大学は、2022年6月に敦賀市から共同研究を受託し、地域公共人材・政策開発リサーチセンター(LORC)の事業として、地域活性化に尽力する事を目標として調査を実施
◯ 敦賀市が国内シェア約8割を占めるというおぼろ昆布は、手すき昆布職人による透けるほど薄い絹のような昆布。職人の減少に伴う技の継承という現代課題への政策的取り組み
◯「おぼろ昆布」の文化的価値創出にあたっては、政策学部学生らの若者の視点や発想を取り入れ、次世代につなぐストーリー創出をめざす
龍谷大学は、2022年6月に敦賀市から「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業*1)にかかる共同研究を受託し、地域公共人材・政策開発リサーチセンター(LORC)が実施主体として、2023年3月末までの事業期間を通して、「おぼろ昆布」を敦賀市の名産として位置づけ、地域活性化につなげる施策を検討していきます。
“うまみ”はすでに世界共通言語になりつつあるほど、第5の味覚として浸透しています。この“うまみ”成分のひとつである、グルタミン酸を豊富に含む昆布は、北前船の歴史から敦賀市で手すき加工の技術が発達し、現在では国内シェア約8割を占めるとされます。また、敦賀の昆布加工には2020年に厚生労働省の認定する「現代の名工」に表彰された別所昭男氏を筆頭に、卓越した技術を有す職人が多くいますが、高齢化に伴う職人の減少という課題もあります。
このたび第一回フィールド調査として、7月8日・9日に石倉研 研究員(本学政策学部講師)とゼミ生が、敦賀市内のおぼろ昆布製造現場の視察、昆布かきの体験、敦賀市のまちづくりの現状及び昆布の小売り状況等の視察を行いました。近年の「おぼろ昆布」に関する情報は少なく、今後を検討するためにもまず現状を正確に把握し、明らかにしていきたいと思っています。
調査に参加した政策学部・石倉ゼミの学生からは次のような感想が寄せられました(※一部抜粋)。
・「今回の調査で別所さんのお話を聞いて、昆布には様々な種類があるということを知ることができたほか、種類によって味が違うことや、昆布の厚さや職人さんの技術によって食感が変わってくることを実際に体験し、昆布の奥の深さを実感することが出来た良い機会となった。それだけに、職人さんが減るということは、おぼろ昆布の生産量が減るだけではなく、昆布の多様性までもが失われてしまうと感じたので、危機感が一層強まった。」
・「別所さんが作った「竹紙昆布」の薄さに驚きました。別所さんの息を止めて一気に昆布を削る姿を見ると、そんなに難しい作業ではないと思ったが、作業体験をするとその力使いの難しさを感じました。別所さんはきっと長年の練習を積み重ねてその卓越した技能を身につけたのだと思います。おぼろ昆布は食品というだけではなく、伝統文化でもあることが今回の調査で身にしみてわかりました。」
・「(おぼろ昆布製造に関わる職人の)平均年齢がとても高いことに驚きました。一般企業だと定年退職を迎える65歳であっても現地の職人の平均年齢に達しておらず、別所さんぐらいの年齢の方々がこんなに体を使う仕事をしているのを知りました。頑張って今まで築き上げてきたこの仕事がこのままなくなってしまうのは悲しいので、より一層力になりたいなと思いました。
今後、敦賀市との共同調査を通じて、若い視点や発想を取り入れながら次世代につなぐ「おぼろ昆布」のストーリー創出を進めていきます。
【用語解説】
*1)「食文化ストーリー」創出・発信モデル事業
特色ある食文化の継承・振興に取り組むモデル地域等に対し、その文化的価値を伝える「食文化ストーリー」の構築・発信等を支援することにより、文化振興とともに地域活性化に資することを目的とする文化庁補助事業です。敦賀市は、『和食を支える「敦賀昆布ストーリー」創出・発信事業』として、令和4年度モデル事業に採択されました。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/joseishien/syokubunka_story/
【関連ニュース】
2022年7月15日 中日新聞「おぼろ昆布を文化財に 敦賀市と龍谷大、製法や歴史を共同調査」
https://www.chunichi.co.jp/article/508251?rct=fukui