Research Centre for the Local Public Human Resources and Policy Development(LORC)

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【LORC】シンポジウム『言語政策と「空間デザイン」』を開催しました

2023.09.24

 龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンター(LORC)と日本言語政策学会(JALP)の共催で、シンポジウム:言語政策と「空間デザイン」が開催されました。

日時:2023年9月24日(日)13:30-
場所:龍谷大学深草キャンパス22号館301
共催:龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンター、日本言語政策学会

13:30- 開会の挨拶 山川和彦(日本言語政策学会会長・麗澤大学教授)
13:45-14:30 基調講演「都市空間に表出される言語環境」服部圭郎(LORC研究員・龍谷大学教授)
14:45-16:20 パネルディスカッション
  「空間体験と言語環境」阿部大輔(LORCセンター長・龍谷大学教授)
  「地域言語と観光空間」柿原武史(関西学院大学教授)
  「多文化共生に向けた空間デザイン」岡本能里子(日本言語政策学会副会長・東京国際大学教授)
   ディスカッサント:服部圭郎、ファシリテーター:村田和代(LORC研究員・龍谷大学教授)
16:20- 閉会の挨拶 山川和彦

 開会に際して、日本言語政策学会会長山川和彦氏から、本シンポジウムの開催経緯について確認がありました。言語学を専門領域とする研究は、具体的な「ことば」が研究対象である一方で、どのような装置としての「空間」がコミュニケーションを生み、場所を生成・創出していくのかについて考えていく必要性が高まっていると言います。二回目の開催となった同シンポジウムでは、都市政策・都市デザインが専門で、都市空間を研究対象としてきた服部圭郎研究員、阿部大輔LORCセンター長を迎え、分野横断的な議論が交わされました。

 まず、服部圭郎氏から、「都市空間に表出される言語環境」と題した基調講演がありました。都市空間に表出する標識や広告、店舗の看板などが言語として空間を認知させる機能があることを、サンフランシスコやラスベガス、大阪などの写真とともに例示しつつ、近年建築や空間のグローバル化(コスモポリタン的な)によってさらに言語環境の優位性が促進される可能性を示しました。服部氏は、言語環境はそれを解するものには的確な情報を伝える一方で、そのユニークなデザイン性から視覚的に「うるさく」なる可能性を指摘しました。

 休憩を挟んで後半は、「空間体験と言語環境」阿部大輔、「地域言語と観光空間」柿原武史、「多文化共生に向けた空間デザイン」岡本能里子の3本の報告と、服部氏、またLORC前センター長で言語学が専門の村田和代氏を交えたパネルディカッションが行われました。

 阿部氏は、観光に行くことは空間体験をしていることであるという前提を踏まえ、観光地の音声ガイドに代表される丁寧な言語環境の構築によって、直感に訴える空間体験との出会いが減じてしまう可能性を指摘しました。

 柿原氏は、スペインの地域言語(国家語以外の言語を指す)であるガリシア語が自治州公用語となっているガリシア州サンティアゴ・デ・コンポステーラにおける言語景観の報告をしました。地域言語(ガリシア語)は公的表示が中心であり、民間におけるガリシア語の使用は限定的であるとの報告がされ、外国人観光客にとってガリシア語が可視化されることにどのような意味を持つか、すなわち、誰のための言語景観か、がその後のパネルディカッションでも論点となりました。

 岡本氏からは言語の表記の仕方によるイメージの抱き方が、例えば「広島」「ヒロシマ」や「車」「クルマ」で異なること、また、言語表現を排したピクトグラムなどの伝達手法は文化的背景の異なる人にとっては正確に意図が伝わらず、間違った解釈を促す懸念があることが報告されました。誰に何を伝え、どう配慮すべきかは伝えたいことの目的によって異なります。パネルディカッションでは、こうした報告を踏まえ、「言語景観は誰のためのものか」が大きな論点となりました。

服部圭郎氏による基調講演
パネルディスカッションの様子