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龍谷大学学生気候会議(第3回)が開催されました【LORC】

2023.12.21

3回目となる龍谷大学学生気候会議(以下、学生気候会議)が12月2日(日)、12月16日(土)の2日間にわたって開催されました。
国内では大学での開催の例がいくつかありますが、無作為抽出による学生募集、2日間にわたる学習と討論を経て提言書をまとめ、大学に提案、対話するところまで充実した取り組みは本学が唯一のものです。

世界的に取り組みが進む脱炭素社会への挑戦には、環境・経済・社会の包括的な視点と、社会の全てのアクターの主体的・能動的な取り組みが求められています。気候市民会議(Climate Assembly)は、気候危機の回避を目的として無作為抽出された、市民の代表者による議論を通した政策提言の手法で、フランスやイギリスなどで2019年ごろから政府や議会、自治体により開催され、日本でも札幌市などで開催されています。

大学は温室効果ガスを大量に排出する組織としてはもちろん、次代を担う若者を育成する組織としても、脱炭素社会の実現への挑戦において、大きな責任を有しています。
そこで始まったのが学生気候会議で、2021年12月に第1回が開催されました。学生によりまとめられた提言は入澤崇学長にも届けられ、大学のカーボンニュートラル宣言の際に参考とされました。
2回目は、昨年度参加した学生が中心となって立ち上がった学生団体OCsと龍谷大学LORCが共同で企画から実施まで担いました。
3回目となる今回のポイントは、①討議テーマに実際にキャンパス周辺で計画されている開発計画への学生視点での提案が組み込まれたことで、具体的な地域の動きに寄り添ったものになったこと、②LORCの研究プロジェクトの一環でありつつも、全学的な取り組みとしての位置づけが行われたことで、今後本学が取り組む脱炭素へのガバナンスへの学生参画の布石となったことが挙げられます。

学生の募集は、全学部の1〜4回生(19,891名)の学籍番号から無作為抽出した3,995名のメールアドレスへの一斉配信、学内ポータルサイトでの通知、全キャンパスでのポスター掲示などを行い、35人から参加申込を受けました。当日は事前にファシリテーション研修を受講したOCsから4人の学生を含む6名のファシリテーターが参加し、グループディスカッションの円滑化、活発化に大きな役割を果たしました。一般参加、学生ファシリテーター合わせて29人が全日程参加し、LORCグリーン・リカバリー研究ユニット長の的場信敬政策学部教授から修了証が手渡されました。

《1日目のプログラム》
9:15-9:45 オープニング
9:45:12:00 アイスブレイクを兼ねたカードゲーム 進行:京都府地球温暖化防止活動推進センター 副センター長 木原浩貴氏
12:00-1:05 休憩
12:05-12:30 基礎知識提供「気候変動とSDGs」国際学部 斎藤文彦教授
13:30-13:50 基礎知識提供「京都市・脱炭素ライフスタイルの具体的事例」京都市エネルギー政策部長 佐々木亮太氏
13:50-14:05 基礎知識提供「龍谷大学ゼロカーボンユニバーシティに向けた取り組み」深尾昌峰副学長
14:05-14:55 討論テーマIへ導入「大学の脱炭素化へ向けた取り組み」NPO法人気候ネットワーク 主任研究員 豊田陽介氏
14:55-15:05 休憩
15:05-16:35 グループワーク
16:35-16:45 ラップアップ 1日の流れの振り返り

冒頭、入澤崇学長から参加者へのメッセージが送られました。
学長から「様々な課題対応を教職員だけでやる時代ではない。学生目線で見つけ出した課題が大切。大学だけでなく地域をより良いものにし、世界に広げていく必要がある。気候会議で意見が交わって新しいアイデアが生まれる。学生の声は宝。これまで大学の取り組みに学生の目線は重視されてこなかったが、考え直さなければならない。この学生気候会議は学部時代に真剣に社会に向き合う場であり、この会議から学生主体の会議体が学内の様々なところで生まれることを期待している」と参加者への激励がなされました。

基礎知識提供「気候変動とSDGs」では国際学部の斎藤文彦教授からプラネタリーバウンダリー(地球の限界)について説明がなされました。斎藤教授は「私たちは物質的なレベルを下げなくても新たな豊かさを手に入れられるし、地球上のすべての人々がその豊かさにアクセスできるようにしなければならない」と締めくくりました。

午後の部は、講義の後グループワークに取り組みました。
京都市エネルギー政策部長の佐々木亮太氏から「脱炭素ライフスタイルの具体的事例」が紹介されました。京都市は国から脱炭素先行地域に指定され、龍谷大学が立地する伏見エリアでは文化遺産群・商店街エリア等をターゲットにし、大学と協働してグリーン人材育成をめざしています。佐々木氏は「つながり、連携がキーワード。大学、企業とつながり相乗効果を創出させたい。皆さんには自分として何ができるか考えてほしい」と期待を示しました。

次に深尾昌峰副学長から、2039年までのカーボンニュートラル宣言に向けた戦略と具体的な取り組みについて情報提供がありました。深尾副学長は「現在大学全体の消費電力の4割を自家発電し、不足分は自然エネルギーを購入している。今後自家発電を増やし、サスティナビリティを高めていく取り組みをすすめ、次の価値を生み出していく。学生のみなさんもいっしょに考えて行動できることを期待している」とメッセージを送りました。

グループワークへの導入として、気候ネットワークの豊田氏から大学のCO2排出量データの紹介がありました。豊田氏は「2039年に大学全体で脱炭素化するのであれば、2030年にはどうなっているべきか、大学の直接排出量だけでなくサプライチェーンも含めて脱炭素をめざすのかも明確にしなければならない。気候変動はこの社会の様々な問題とつながっており、民間企業のビジネスモデルもサスティナビリティを意識しなければ相手にされなくなってきている。みなさんの関心のある業界の仕事の内容がどうかわっていくかも注目が必要」と問題提起しました。

以上の基礎知識、情報提供を受け、6つのグループに分かれて、大学に求めることについて討論が始まりました。ファシリテーターが進行し、熱心な議論が交わされました。
討論の結果共有では、ごみの分別や節電、食品ロスの削減などの基本的な環境負荷削減の取り組みをすすめることのほか、もっと大学の取り組みやイベントの情報発信、環境について学べる機会を増やしてほしい、などの要望も出されました。

《2日目のプログラム》
9:30-9:35 オープニング
9:35-9:55 テーマIの議論共有
9:55-10:05 テーマ1に関するコメント 斎藤教授、的場教授
10:05-11:05 討論テーマIIへの導入「伏見工業高校跡地のライフ・デザイン」
        株式会社市浦ハウジング&プランニング大阪支店 計画室長 森田恭平氏
        木原浩貴氏の進行による質疑応答
11:05-11:15 休憩
11:15-11:30 情報提供「オーストリアの事例から」木原浩貴氏
11:30-11:35 討論テーマIIの議論ポイントの説明 的場教授
11:35-12:35 グループワーク① 学んだことの共有
13:35-13:50 グループワーク①の続き ワールドカフェ方式で全体に共有
13:50-15:00 グループワーク② 討論テーマIIに関する提案内容の検討
15:00-15:10 休憩
15:10-15:30 グループワークの最終報告
15:30-15:45 グループワーク及び全体に関するコメント 斎藤教授、的場教授
15:45-16:05 意見集約
16:05-16:25 チェックアウト
16:25-16:35 クロージング

2日目は前回の振り返りのあと、株式会社市浦ハウジング&プランニングの森田恭平氏から討論テーマⅡに関する情報提供がなされました。京都市は、2024年3月末に学校再編で閉校する京都市立伏見工業高校の跡地4haに、脱炭素型の住宅街区の建設を計画しています。コンセプトを「エネルギーが街と人を育てていく」とし、地域に開かれた商業施設、菜園、コ・ワーキング施設、学生寮、社会人寮など多世代が住み替えながら共住でき、社会貢献にもつながる暮らしの実現をめざし、2028年には入居を開始できるようビジョンの具体化を進めています。森田氏は「ディベロッパー、地域、企業、大学、団体などと一緒に作っていくプロジェクトであり、この会議で魅力的なアイデアが出されるのを楽しみにしている」と締めくくりました。

グループワークに入る前に、木原氏からオーストリアのランゲネック村の事例が紹介されました。木原氏は「20年前は過疎で未来が見えない村だったが、いまは人が増えている。それも脱炭素のためでも光熱費が安いからでもなく、ここに住みたいという人が増えている。日本人は気候変動対策をコストと受け取る人が多いが、これをひっくり返したい。そのためには脱炭素に暮らし方という息吹を吹き込んでいく必要がある。脱炭素型のライフスタイルを創出し、街区を地域に広げ、波及させていくため、大学としてどんな役割を果たせるか、考えよう」と視点の提供がなされました。

的場教授は、下記3つの論点を提示し、グループワークが始まりました。
①ハードだけでない脱炭素の取り組みをこの街区で進めるしくみ、取り組みとは?
②脱炭素化に向けてこの街区の住民間のつながりをどのように作り出すか
③この街区とその周辺の地域をどのように繋げていくか

2時間半のグループワークを経て、グループごとに成果が発表されました。
グループからは、「大学生が子供に勉強を教える場、高齢者対象のスマホ教室など、多世代が得意分野を生かしたコミュニケーションの場をつくる」「街区を知ってもらうためのお試し住宅をつくる」「ストリートバスケなどボール遊びができる場所がほしい」「学生がチューターとなり街の魅力をSNSで発信する」「不用品の交換所、カーシェア、菜園で育てら野菜を使ったコミュニティカフェ、駄菓子屋、足湯、サウナ、お寺、防音室、ドックランなど地域との交流を生む場所をつくる」「高齢者と若者が、電球の交換から買い物・ゴミ出し支援などでギブアンドテイクの関係づくり」など、ハード面だけでなくソフト面も含め多様なアイデアが出されました。

発表を受け、斎藤教授からは「伏見工業高校の跡地利用が、一人ひとりがどういきていきたいのかにつながっていく。義務感ではなく楽しいからやってみたいアイデアであることが大切。脱炭素のライフスタイルは我慢ではなく、人生を豊かにするものだ」とのコメントがなされました。

最後に、予め用意されていた大学が取り組むべき活動リストについて、重要度を投票する「意見集約」を行い、すべてのプログラムが終了しました。的場教授から一人ひとり修了証が手渡されたあと、参加者が輪になって座り、感想を述べ合い、会議は終了しました。

関係ウェブサイト
第3回龍谷大学学生気候会議のwebsite
https://lorc.ryukoku.ac.jp/events/events-264/

龍谷大学 カーボンニュートラル宣言
https://www.ryukoku.ac.jp/about/activity/global_warming/carbon_neutrality/

京都市の脱炭素先行地域の取組について
https://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000305694.html

主催:龍谷大学学生気候会議実行委員会
開催事務局:龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンター(LORC) https://lorc.ryukoku.ac.jp/
運営協力:龍谷大学学生気候会議 OC’ s https://twitter.com/OCs_ryukoku
後援:京都市